【AKB48学】コラム6 すべての人は、『アイドル化』していく

Kindle化を断念した幻の『AKB48学』。そのブログ化企画です。

(経緯と目次はここでご確認ください→『AKB48学』っていうタイトルのKindle本を出そうとしてやめた話

 

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コラム6 すべての人は、『アイドル化』していく

 

 本の冒頭、「はじめに 」で、大島優子さんと前田敦子さんの「勘違いする力」について触れましたが、もちろん山本彩さんについても勘違いエピソードがあります。

 ファンからの「(将来は)女優志望?ソロ歌手デビュー?それともずっとNMB?」という質問に対して、彼女は「キャプテンである限り、私がNMBを辞めるのは最後です」と答えています(山本彩Google Plus 2012年3月15日)。いや、責任感の強いどこぞやの船長かよ、と笑 こういう熱い発言をしてしまうところが、ファンから好かれるところではありますが、なかなかの「勘違いする力」を持っていることがわかります。

 さて、そんな山本彩さんですが、最近の活躍には目を見張るものがあります。

 特に、大ヒットしたNHKの朝ドラ『あさが来た』の主題歌『365日の紙飛行機』でAKBのセンターとして歌い出しを一人で歌い、その曲をもってNMBとして紅白歌合戦に出場したことは、彼女の中で大きな大きな一歩となったことでしょう。もはや彼女の歌声を知らない人を探すほうが難しいのではないでしょうか。5年間、本当によくここまで頑張ってきたなぁと、親でもないのに感慨深い気持ちになります。

 僕は、彼女の歌声が大好きです。伸びの良い、気持ちの良い声だと思います。でも、彼女が歌番組などで他の歌手たちとコラボなどすると、やっぱり少し見劣りするよなぁとも思ってしまうのです。

 そんな歌手としての実力が未だ十分とはいえない彼女が紅白に出場し、数秒でも一人で歌うことができたのは、彼女が「アイドル」だからです。

 アイドルは、他者からのひいきがあって初めてステージに立つことが出来ます。それなりに可愛くてスタイルの良い人はたくさんいるし、ダンスして歌うのも10代の素人が2、3ヶ月練習すればこなせるレベルだし、おしゃべりしたり、握手をしたり、水着を着たりは正直誰でも出来る。問題は、これら全ての仕事をいかに平均以上のクオリティーで、手抜きなく一生懸命こなせるかです。アイドルは、一芸が買われてなるものではありません。そのため、その仕事の幅に制限はなく、体を使った表現であればなんだって行います。激辛料理食べたり、バンジージャンプしたり、モノボケしたり、富士山昇ったり、何でもする。山本彩さんも、最初の写真集を出してしばらくしても、水着にはまだかなり抵抗があったようです。でも、振られた仕事はやるしかない。似たような才能はたくさん転がっていて、次は自分に来ないかもしれないから。それを彼女たち自身もよくわかっているから、変なプライドを持たず、やったことのない仕事でも、どんどん引き受ける。むしろ、それに挑戦していく姿を見せるときこそ、彼女たちの真価が問われるときといっても過言ではないくらい。そして、最後にはいつも、お客さんへの感謝を述べる。そうやって、アイドルたちは自分をひいきにしてくれる人を増やし、活躍の幅を広げていきます。

 ひるがえって、僕たちのことを考えた時、僕たちも結局は自分をひいきにしてくれる人に支えられていることがわかると思います。物質的なものが行き渡った日本において、ほとんどの人はサービス業についているので、誰かからサービスを買ってもらわなければなりません。野菜や魚、単純な料理、原始的な家電製品などであれば、その物質的な品質と値段で売れる、売れないは決まりますが、サービスはそういうわけにもいきません。サービスの質というのはその使われ方によっても変わり得るし、たとえ高度で専門的な内容のサービス(経営コンサルタントや法律的なアドバイスなど)であったとしても、それが本当に的確な内容のサービスなのかは、外から見てもわからないからです。フェイスブックのような「製品」であっても、出資を受ける際はたしかにそのサービスがクールだったからだとは思いますが、誰かかがそのサービスを気に入って他の人に紹介しなければ、利用者が増えることはありません。結局、だれそれが推薦しているからとか、長年の付き合いで信頼しているからとか、誰かのひいきがあってこそ、サービス業は成り立ちます。

 産業革命以後、機械は人間の仕事を奪い続け、コンピューターもホワイトカラーの事務仕事を奪い始めています。しかし、結局自分にお金を払ってくれるのは、自分をひいきにしてくれる誰かがいるからです。まずは振られた仕事をちゃんとこなして、自分のプライドに固執せず、未知の仕事も引き受ける、そして、感謝する。そういうアイドル的な姿勢を忘れないようにしていれば、生きていける。むしろ普通の人はアイドル的になるしか、生き残る道はない。だからこそ、全ての人は「アイドル化」していくのです。

 そして、アイドルの素晴らしいところは、アイドルが夢への一手段にすぎないことです。たとえ、自分のアイドル的な生き方に嫌気が差したとしても、自分のやりたいことを思い出して、そこへの足がかりにすぎないことを思い出せばよいのです。また、自分のやりたいことがわからなくても、アイドルこそ自分の天職だと気付くことがあるかもしれないし、アイドルをやっている間に何かやりたいことが見つかるかもしれない。アイドルは、突出した能力を持つ人たちではありませんが、やはり特定の分野で選ばれた人たちなのです。そのことに誇りをもちつつ、自分が次へ進むためのステップであることを自覚して日々生きてい行く、そういう「アイドル道」を究めんとする者だけが、本当の自分の夢に近づくことができるのかもしれません。

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