世界にアイドルは3種類しかいない

「世界にアイドルは3種類しかいない」という仮説を思い付いた。ここでいう「アイドル」は、概念としての「かわいい」を体現している存在くらいの印象でいてもらって構わない。

その細かい内容に入る前に、まずは以下のMVを見ることから始めたい。

 

アイドルを構成するふたつの要素ー性的成熟と身体的成熟

まずはこちら。AOA(Ace Of Angelsの意味)という韓国の女性アイドルグループのMVから。2014年にこの『Miniskirt』という曲で日本デビューも果たしており、この一年、日本で最も売れた韓国女性アーティストである(AOA、日本4thシングル「愛をちょうだい」がオリコン3位に“高まる人気” - K-POP - 韓流・韓国芸能ニュースはKstyle)。同グループで最も人気のあるメンバーであるソリョンは、韓国では男性好感度ナンバーワンアイドルとされ、国会議員選挙の広報大使も務めているようである(“男性好感度No.1アイドル”AOA ソリョン、驚きのポーズ…ベッドに横たわり長い髪の毛でハートを作る - ENTERTAINMENT - 韓流・韓国芸能ニュースはKstyle)。僕も先日、AOAの新曲プロモーション来日イベントがあったので握手をしにいったが、素朴な感じで非常に可愛い方だった。

いかがだっただろうか。肌の露出は少ないものの、その艶めかしいダンスからは「エロい」という言葉以外出てこない。友達にこのMVを送り付けたら、一言「エロくね?」と返ってきた。それくらいインパクトのあるMVである。

 

続いてこちら、ご存知の方も多いと思うが、2010年に発売されたAKB48ヘビーローテーション』も改めて見ていただきたい。

このMVを見て、「エロい」と感じた人はどれくらいいるであろうか。先のAOAのMVを見てしまった手前、「全然エロくないじゃん」と思った人も多いのではないだろうか。

 

僕はかなり久しぶりにこのMVを見た。昔あんなにAKBが好きだったのに(大島優子にとって、『センター』とは何か)、今はこのヘビロテのMVに対して若干の嫌悪感すら抱いてしまっているというのが僕の正直な感想である。

なぜかと考えたときに、前述のようにヘビロテのMVは「エロくない」からであることが挙げられる。少女たちが夢の中のようなカラフルな空間で綺麗なランジェリー姿のまま戯れているわけだが、彼女達の胸やお尻、太ももなどがこれといって強調されるわけではない。顔のアップが多く、その可愛さは際立っているものの、彼女たちの女性的な魅力を押し出したMVではないことは明らかである。

しかし、である。思い出してほしい。MVの後半で彼女たちは猫耳を付けて、猫のように遊び、四つん這いになり、思いのままにお菓子にかじりつく。極めつけは板野友美が四つん這いのような姿勢のまま口の周りを白いホイップクリームらしきものでべたべたに汚し、上目遣いでこちらを見つめてくるシーンである。スクショするのがはばかられるので、見たい人は曲の2分49秒あたりを確認してみてほしい。

僕は、何か見てはいけないようなものを見てしまったような気がして、思わず「ドキッ」としてしまった。いや、僕だけではないはずだ、この「ドキッ」は。これは、前半まで性的な魅力などなくエロくなかったはずの彼女たちが、率直に言ってしまえば急に「性的に成熟し、性的なものについて知っている女性」と映ってしまったことによる。何も知らずに楽しく演じている彼女たちをそのような目で見てしまうことは多大な背徳感をもたらすものであり、だからこそ嫌悪感を感じてしまうのである。

森岡正博『感じない男』の言葉を借りるなら、「これらのグループ(引用者注:モーニング娘。をはじめとするハロープロジェクトに属するグループ)は、音楽が好きで元気な女の子というイメージで売り出しているが、その背後には「セックスに満ちた少女たち」というサブリミナルな(見ている者の無意識にはたらきかけるような)メッセージが巧妙に仕掛けられているのである。…その結果、性に満ちた視線が小学生の彼女たちに向けて集中して注がれることになるのである」。

 

ここで最初に見たミニスカートという曲のMVを再度思い出してみたい。

彼女たちの肌の露出は少ない。手首までしっかりと覆われた白ブラウスや黒ドレス。韓国のアイドルにありがちな太もも丸出しのファッションを封印し、ミニスカートと黒タイツで肌の露出を抑えている。しかし、なんだ、あのダンスは。みんなでうねうねしすぎじゃろうて。そしてなんだ、あの誘うような目つき、手つき、腰つき、艶めかしく肢体を強調する衣装は。彼女たちは決してグラマラスなわけではないが、女性的な魅力をこれでもかと画面いっぱいに押し出すダンスは明らかに「エロい」のである。

もっとも、個人のシーンで、人差指につけた白いホイップクリームを唇どアップのシーンで舐めるといういかがわしい行動が映っている。人によってはこのようなものを見せられて、「ドキッ」としてしまったという方もいるだろう。しかし、僕はドキッとはしなかった。というより、少なくとも背徳感は感じなかった。なぜなら、それをしているのは顔だちの整った金髪の綺麗なお姉さんで(アジア人で金髪の幼女は一般には存在しないとみてよいだろう)、八重歯で黒髪の幼い少女がしているわけではないからであり、もともとダンスで散々誘ってきているお姉さんが、その意図をわかってやっているようにも映るからである。

何も知らない少女を大人が操るような背徳感は、そこには存在しない。だからこそミニスカートのMVはダンスがあんなにエロいにも関わらず、ヘビロテに比べれば嫌悪感なくすんなり見ることが出来るのである(これはたとえば胸板が厚く引き締まった体をした男性ダンサーが上半身裸で、マイケルジャクソンがみせるような情熱的に腰を振る踊りをしているところを見たところで対して背徳感を感じないのと同じだろうと、女性陣に代わって勝手に想像するのだが、いかがだろうか)。

結局、AOAのパフォーマンスは、健康で女性的な身体の持ち主であることのアピールの延長にあるかのような、単なるお色気(健康的なお色気とでもいおうか)にすぎないのである。

 

以上を踏まえれば、アイドルを魅力的なものにするための要素には2つがあることが分かったと思う。ひとつは「性的な成熟性」、ひとつは「身体的な成熟性」である。言い換えれば、前者は性行為の対象たりえるかであり、後者はお色気があるかである。

 

性的な成熟性と身体的な成熟性の要素を座標軸に、それぞれの高低によって4象限に分けた場合、AKB48と韓国のアイドルであるAOAは以下のようにプロットできると思う。

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女性らしい身体的特徴に乏しく、また性的な行為の対象ともみなされないAKB48は、左下のオレンジの部分にプロットされる。

そんな魅力のないアイドルが売れるのかと思われるかもしれないが、そもそもこの4象限に乗るための最低条件かつアイドルとして成功するための最大の条件である「かわいい」を備えているため、このプロットはあくまでアイドルの特徴を示すものにすぎずない。

そして、AKBには上述のように「ドキッ」とくる瞬間がある。「性的に成熟し、性的なものについて知っている女性」なのではないかと期待してしまう瞬間がある。それが左側の矢印であり、これによりAKBは性的な対象へと一気に高められ、左上にプロットされる。もちろん常に左上に存在し続けることが出来ないため、普段は左下でただの可愛くて元気なだけの集団として存在する。少女という性の対象として禁止されている存在であるからこそ一時的に性の対象として左上に跳ね上がるのであって、禁止が解除された状態で左上(色気がないのに常に性の対象たりうること)に留まり続けるるのは不可能だからである。

AOAは、右側の中間にプロットされる。お色気全開だが、AKBのように背徳感にぞくぞくするほどの性的な対象とはならない。しかし、その色気でもって一定程度は性の対象たりうるため、普段のAKBよりは上側に位置される。

 

3種類目のアイドル

勘が良い方はすでにお気づきかもしれない。「あれ、4象限の右上、空いてるよね?ここのニーズ、空いてるよね?」と(右下については後述する)。

そこで僕は、右上(性行為の対象たりえ、身体的な色気もある)にプロットすべきものとして、アリアナ・グランデを推薦したい。アリアナ・グランデ(ポニーテールでまつ毛がばさばさした小柄な女性である。そしてめちゃめちゃ可愛い)は、テイラースイフト(高身長で顔だちが整っており、一見して大人な女性である)との比較においては可愛い路線が強く、その熱狂的な人気からもアイドルの絶対条件である「かわいい」を備えているとみなせるため、ここではアイドルとして参加していただくことにした。

ご覧いただきたいのは、2014年にアリアナ・グランデが参加した楽曲『Bang Bang』のMVである。

まさにノリノリである。AKBやAOAのオタクたちが乗れるような代物ではなく、そこにはリア充のみの空間が広がっており、歌詞の過激さを差し引いて映像だけで見ても男女がいますぎにでも絡み合い何かおっぱじめそうな勢いである。アリアナも、薄暗いベッドの上で寝転び、誘うような表情をしたり、ほとんど下着のような形のパンツを履いて怪しげなダンスを踊っている。このMVでのアリアナは、身体的な色気を十分に備え、かつ性行為の対象たりえるものとして描かれているといえる。基本的に色気と性の要素は正比例するので、ある意味一番素直なアイドルかもしれない。4象限にプロットすると以下のようになるであろう。

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アリアナは、AOAほど過激なダンスを踊るわけでもないため色気は少し弱い。また一方で左上のAKB48ほど露骨な表現でもないため、性的な様子も弱まる。むしろ色気と性的な要素が両方ともに全開だったら、それはただの「下品な人」もしくは「ポルノ(アダルト女優)」(アダルト女優が下品な人であると言っているのではない)になってしまう。あくまでアイドルの枠を出てはいけないのだ(アイドル的な人気を誇るアダルト女優がいることは確かだが、テレビなどに頻繁に出るようになるとたいていはアダルト女優ではなくなることからしても、「超右上」に存在する「下品」なアイドルはいないとわかる)。

 

3種類のアイドル、そして最後の空白

さて、これで3種類のアイドルが存在することが確認できた。

  1. AKB48に代表される日本型アイドル。色気はなく、普段は性的な対象ともみなされないが、過渡な禁止と製作者の意図的な企みによって、一気に性的な対象へと昇華することがある。4象限の左下もしくは左上。
  2. AOAに代表される韓国型アイドル。色気全開のパフォーマンスをするが、必ずしも性的な対象としての要素は強くない。4象限の右中間。
  3. アリアナ・グランデに代表される米国型アイドル。色気や性的な要素がともに強めだが、下品にならないような絶妙なバランスが取れている。4象限の右上。

そして、4象限のうちの右下(色気全開だが性の要素がない)が空白となっているが、色気と性の要素は基本的に正比例するし、現実的に右下に位置するような人物が存在することは想定しがたいため、アイドルは上記3種類しかないといってよいであろう。よって、当初の仮説通り、「世界にアイドルは3種類しかいない」ことがわかった。

なお、右下について考えるに、そこに位置するのは「日本アニメの登場人物」ではないかと思う。アニメを全く見ない分際なので語る資格はないのだが、印象としてアニメの登場人物たちがアイドル的なかわいさを備えているのはもちろん、彼女たちの多くは巨乳で肉感的であるから色気はある。しかし、年齢が幼い、足が細すぎる、童顔、声が子供っぽすぎるなど、性行為の対象としての成熟が見られないことが多い。むしろそのような大人の汚らわしさを極端に排除することで、処女信仰のあるオタクたちの「萌え」を誘っているともいいうる。むろんエロアニメは存在するが、エロアニメは基本的に趣味嗜好の違いによってアダルトビデオの代替として利用されているにすぎないと思われ(アダルト女優がアイドルではないことは上述)、「アイドル」という括りからは逸脱してしまっていると考えるため、4象限のいずれにも入らない。

以上の議論をすべてまとめたのが、以下の4象限となる。

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アイドルとお国柄

日本、韓国、米国で全く違うアイドル像が浮かびあがった。それぞれ違うニーズをつかみ、市場として互いを食いすぎないように大変うまくやっているといえる。

どうしてこのような差が生まれたのかについて、僕は十分な考えを持ち合わせていないが、お国柄を踏まえた考察を一応述べてみたいと思う。

日本には、制服萌えやロリコン文化など、どうにも背徳感を性欲の刺激装置として利用されてきた背景がありそうであり、AKBなどもまさにこれにあたるといえる。詳細は、森岡正博『感じない男』に詳しい。だから基本は左下で、たまに左上に跳ね上がることもあるのである。

韓国は、女性の平均身長が161cmと日本女性より3cmも高く、また整形がより一般的で、顔を欧米人に近い大人びた顔だちにすることが好まれる(と勝手に思っている。この前のミスコリアでは、出場者の顔が似すぎていて見分けがつかないとネットで話題になっていた)から、必然的にパフォーマンスもそのスタイル抜群の身体や成熟した雰囲気でもってお色気路線となる。しかし元来儒教の国であり(儒教が何かは正直何も知らない)、性に対してオープンでないため、性の要素を強くしないように過激な演出はしない。だから右中間に位置する。

米国は、アジアに比べて性にオープンである。日本や韓国では付き合う前に性交渉をすることは多くはないはずだが、欧米では同時期に複数人と関係を持ち、最後に付き合う人を決めるというパターンが決して少なくないと聞く(知らんけど)。加えてそもそもグラマラスな体型の持ち主も多いから、色気を押し出す。したがって、右上に位置するのである。

 

さて、最後になるが、僕自身、書きながら「サンプル少なすぎて、これはさすがにこじつけすぎじゃねえかなぁ」などという考えが何度も頭をよぎったものの、一応まとめてみた。今後は各アイドルがどこに位置するのか確認していく作業が必要になる。以上の考察が読者の方々がアイドルを考える上でのひとつの参考になったら、嬉しいかぎりである。

 

それでは。もんもん。

 

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※追記(2016-05-01)

以上を英訳(というか知らない人が読んでもわかりやすいように写真を多く、多少シンプルな説明に)したので、一応貼っておきます。

Three types of “idols” in the world(edit ver.) - lifelog in the US